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確かに出石事件の発覚時には信用から何から総崩れで,桂に対する感情が一体何なのか分からなくなっていた。
それが今は少し変化した。
諦めがついたからと言えばそうかもしれない。だけど少しずつ感情が戻って来てる気もする。
『もう一度,ちゃんと心から愛せる日が来るんやろうか。』
腕の中で顔を上げて桂を見上げた。桂は涼し気に笑みを浮かべて小首を傾げた。三津は何でもないと小さく首を振った。
「そう?じゃあ素直に気持ちを言葉にしない妻へ私から一言。
先の不安を考えても仕方がないよ。まだ起こってないし,起こるとも限らないからね。」
「……不安そうな顔に見えましたか?」
当たらずとも遠からず。三津は自分の顔の正直さに呆れて溜息が出そうになった。
「三津は素直だからね。先の事など分からないから今を必死に生きてる方が懸命だよ。
だから私は今必死だよ。もっと君との時間を過ごしたくて。」
『そうや。この人も甘えたがりな人やった。』香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
いつも凛と澄ました顔で仕事をこなすこの男の姿しか知らない人は,目を疑う光景がここにある。
年下の妻に擦り寄って甘える大童がここに居る。三津はようやく手に入れた安らぎの時間に酔いしれる桂を眺めながら,今に至る迄を静かに思い返した。
今までにも何度思い返したか分からない。だけど一瞬たりとも同じ記憶だった試しが無い。
その時その時で過去の記憶の見え方が違うのだ。
『思い出すのがしんどいと思った出来事も,今に繋がる為のモノやったんやって思ったら悪いモノやなかったのかも。』
確実に自分は変わっている。自分だけじゃなくて周りも。
そう思うと悲観的な気分が少し紛れて笑みが溢れた。
「どうしたの。急ににやけて。」
「にやけてます?」
伸びて来た桂の手が三津の柔らかな頬を摘んだ。三津はにやけたつもりは無いのになぁと,桂が摘んだ頬と反対側を自分で摘んだ。
「何か考えてた?」
「はい,また今までを思い返してました。でも以前に振り返った時と気持ちがまるでちゃうんです。私,過去を変えられたのかもしれへん。」
三津の真面目な語り口に桂は一瞬目を丸くしてからやんわり細めた。
「行く末ではなく過去を変えたか。面白い発想だ。詳しく聞いていい?」
桂は本当に君と居ると飽きないよと穏やかに笑った。
「今まで私は色んな人との別れや,自分が傷付いた経験を辛くて苦しいモノって思ってました。でもね,今思い返したらそうやなかったんですよ。
今に至る迄の糧やったって言えばいいんかな?辛いモノやなくて意義あるモノに変わったんです。」
「なるほどね。私との仲違いも,意義あるモノだったと思ってくれたの?」
桂は,そこは別だと言われるんじゃないかと若干不安に思いながら三津の目の奥に問いかけた。
三津はすぐ様頷いて桂の不安を打ち砕いた。
「あの時は辛かったです。でもこうして夫婦になる為の要素?あの件がなければ私達は夫婦にならなかったんやないかって思って。」
「でもそのせいで君は九一と結ばれなかったと思わない?」
ちょっと意地悪な問いだなと思いながらも口から飛び出してしまった。
すると三津は苦笑いでまぁねぇ…とだけ言った。それからまた紡ぐように言葉を発した。
「聞きたくないかもしれませんが,九一さんの事はホンマに好きです。でもやっぱり私と小五郎さんは出逢ったあの時から離れられない運命やったんかなって。今なら思えます。」
「離れられない運命,三津の口から聞くとよりいい響だね。私はずっとそう思ってたよ。やっと三津もそう思う次元に達してくれたんだと思えば,私達の道程は間違っちゃいなかったのかもしれない。」
桂は嬉しそうに笑って三津の手を掴んでその手のひらを自分の頬に引き寄せた。
「いや,迂闊に話せないんだ。君を疑ってるんではなくて今この時でも誰かに聞かれてるかもしれないと用心しなきゃならない。気を悪くしたのならすまない……。」
桂の口数が少なくなると不安になる。まだ出石の件が頭を過るんだ。
それを察して桂は他に心配事は?と訪ねた。
「今どこに身を置いてはるの?」
「遠方に足を伸ばしやすい位置にある宿だよ。今度来る?と言っても君を一人にしてしまうから来てもつまらないよ。」 香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
だからここに居なさいと桂は諭すが,三津はそれでもいいから傍に行きたいと懇願した。
「来ても傍には居られないよ?」
「何で来てくれたら嬉しいって言ってくれへんの?」
いつもならついて行きたいぐらいのわがままを言ってくれと言う癖に。三津は泣きそうな顔で困惑気味な顔の桂を見つめた。
「寂しい思いをさせてすまない。でも……まだしばらくはこの状況が続く。三津は耐えられる?」
「耐えんと木戸さんの奥さんは務まらないです……。だって結婚したら二人でしょ?そしたら一人の時間は今よりもっと増えるんでしょ?だったら耐えて慣れんと……。」
その答えに桂の表情が歪んだ。どうしても無理をさせてしまう。自分が三津の負担になっている。この想いが三津の重荷になっていると感じた。
「すまない。君をそこまで思い悩ませてたとは……。寂しがりの君を一人にして閉じ込めた私は酷い男だ。こんな私と居ると君は幸せにはなれない……。」
「そんな風に思った事なんかない!何でそんな事言うんですか……。」
嫌な予感しかしない。胸がざわついて呼吸が浅くなる。こっちを見てほしいのに桂は視線を寄越さない。醸し出す空気に壁を感じた。
どうしていつもこうなってしまうのだろう。三津は泣くのを堪えて桂の袖をぎゅっと掴んだ。
「私の傍にいれば傷付くだけだ。君のそんな姿見たくない……。無理しなくたっていい。だから……これからは自分の為に自由に生きてくれ……。
もう……終わりにしよう。」
あれからどこでどう過ごしたか記憶がない。気が付けば夜が明けていた。
入江との相部屋には戻らなかったが,桂と一緒だと思われていたから何も不思議がられなかった。
「セツさん,ちょっと調子悪いんで今日は休んでていいですか?」
朝餉の用意をし終えた後で三津はセツに休暇を申し出た。
「やっぱり?顔色悪いと思っちょったそ。今日はゆっくりしとき。後で幾松さんも来よるけぇ大丈夫よ。」
すみませんと頭を下げて三津は相部屋に戻った。
朝餉を食べる時に三津の姿がないのは誰もが気付いたが昨夜は桂と過ごして疲れたんだろうと誰も変だとは思わなかった。
『何であんな事を口走ったんだ……。』
桂は昨夜の事を思い返して自責の念に駆られた。
本当に終わりにしようなんて思ってない。ただ自分と居る事で三津を不幸にしていると思うと堪えられなかった。
三津を思うが故に出た言葉だったがその時の三津の表情が頭から離れない。
青ざめた顔に開き切った瞳孔,途端に過呼吸のように荒くなった呼吸。咄嗟に背中を擦ろうとしたがその手は払い除けられて走り去ってしまった。情けないがその背中を追う事は出来なかった。
このまま引き止めないほうが三津の為だと思ってしまった。
『駄目だ謝らんと。今回も言葉が足りてない……。ちゃんと面と向かって話し合わなければ。』
桂は職務の合間にまた抜け出して阿弥陀寺へ向かった。
「セツさん三津は?」
屯所に着くとセツと幾松が洗濯物を取り込んでいる所だった。
「今日は調子悪くて朝から部屋で休んどるそ。行ってあげて。」
『やっぱり……。』
桂は急いで相部屋へ向かった。
「三津,私だ。開けるよ。」
声をかけて戸を開けた。だがそこに三津は居なかった。居ないどころか部屋がスッキリ片付いている。変な違和感を覚えた。
どこに向かってるかも分からずに追いかけ続けていたら高杉が不意に足を止めた。
「高杉さんっ。」
背中に向かって伸ばした手は高杉の手に捕まった。
「休む。」
やっぱり振り返りもせずその手を引いて一軒の店に入った。香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
二階に案内され部屋に通されると高杉は胡座をかいて壁に背中を預けた。
「何するか分からんって言ったのについて来て……。」
傍にちんまりと正座する三津を一瞥した。
何の抵抗もなく茶屋にまでついて入って来て手を出す自信しかないわと溜息をついた。
「それでも高杉さんが心配やし……。
好きな人と一緒におられへん辛さはめっちゃ分かるし,それを高杉さんに感じさせてもたって思ったら放っておけへんくて……。」
それを聞いて高杉は頭を掻きむしってまた深い溜息をついた。余計に不機嫌にさせてしまったと思った三津は小さな声ですみませんと謝って肩をすぼめた。
高杉は力なく首を横に振った。
「三津さんは優し過ぎる。別に人の痛みまで背負う必要ないやろ。
じゃけん悩みが尽きんそっちゃ。抱え込んだモンはちゃんと吐き出せとんか?」
「えっと……はい……。多分……。」
三津の曖昧な返事にまた高杉から深い溜息が漏れた。
「それも分かっちょらんのは心配じゃ……。」
高杉はこっちへ来いと手招いた。
三津がにじり寄ると高杉は優しく頭を撫でた。
「桂さんはちゃんと吐き出させてくれてんのか?」
「え?でもこれは私の問題やから小五郎さんは関係ないし……。」
「三津さんは馬鹿やのぉ。
もし桂さんがそうやって何かに悩んじょったら三津さんはそれを放っておくんか?おかんやろ?どうにか軽くしてやりたいって思って何かするやろ?」
高杉の言う通りだ。そんな桂を放っておいたりしない。
「その様子やと桂さんは三津さんが悩んじょっても何もしてくれんのやな。そんな男のどこがいいそ?」
「違います!そんな事ないです!小五郎さんは私の相談に乗ってくれてましたし,様子が変って思ったら気にかけてくれて……。」
三津は声を荒げて否定した。
桂はいつだって優しい。この私を甘やかしてくれる。
「……三津さんが甘える事を拒んどるんやな。迷惑かけたくないからか?ん?」
高杉は三津の頭を撫でてそのまま肩を抱いて引き寄せた。
「前にも言ったぞ?誰にも迷惑かけずに生きるなんて無理やからな。それにせっかく歩み寄って来ちょる相手にわざわざ壁作らんでええやろ。」
「はい……すみません……。」
しゅんとした三津を高杉は笑った。
ようやく高杉の表情が和らいだ事に三津も安堵から頬を緩めた。
「すまんな,俺がカッとなって余計な事言うたけぇ追わせてしもた。
でもな俺が勝手に三津さん好いて玉砕して,ちょーっと落ち込んだだけやけ気に病まんでえぇから。
まぁ三津さんが優しいお陰で二人きりになれたわ。」
怪我の功名やとけらけら笑って三津を抱きしめた。
「おっ落ち着いたんやったら帰りましょ!また乃美さんに怒られますから!」
高杉の胸を押して離れようとするが,
「俺言うたぞ?何するか分からんって。」
切れ長の目が不敵に笑う。三津の体から一瞬で汗が噴き出した。
「いや!だから今はもう頭冷えましたよね?落ち着きましたよね?ね?」
「最初で最後じゃ。ちょっと食わせろ。」
背中に衝撃と畳に押さえつけられた手首。上から覗き込んで来る高杉から顔を背けてぎゅっと目をつむった。
「……冗談や。そんなんしたら三津さんは桂さん裏切った罪悪感から自害しそうじゃ。」
そんなに嫌がるなよと苦笑いで高杉は押さえつけてた手首を掴んで引っ張り起こした。
起き上がった三津は拒否するのが当たり前でしょと口を尖らせ,乱れた裾を直した。
「帰るかぁ……。」
「お説教されに帰りますかぁ……。」
高杉は怒り狂う乃美を想像し,三津は冷たい目で笑う桂を思い浮かべた。そして二人はぶるっと体を震わせた。
そしてとぼとぼ藩邸まで歩いた。
「……なぁ,やっぱ帰るの止めんか?帰るならこのまま二人で長州に。」
そして走りやすいように左手を刀へ添えると、たちまち駆け出して行った。
あっという間の出来事に、桜花は手元の冷たい金属を見る。"寛永通宝"と書かれた一文銭が十枚ほどあった。しかしこの時代の金銭の価値など分からない。
ふと顔を上げれば、行き交う町民の視線が、取り残された桜花へ向けられていることに気付く。それから逃れるように、止まっていた足をそそくさと進めた。
少し歩みを進めると、www.nuhart.com.hk/zh/ 見慣れた場所に来ていることに気付く。
「──ここは」
そう、高杉と大立ち回りをした道だった。
あれからどれくらいの時が経っているのだろうか。凍えるほどに冷たかった風は、僅かに暖かさを孕み、春の訪れを身近に感じさせた。
その時、あの……と控えめな声が横から聞こえる。そちらを見遣れば、色白でつぶらな瞳が愛らしい女が立っていた。
「あなたは……」
「へえ。先日は助けてもろておおきに」
まさに高杉が助けに向かった茶屋の娘である。にこりと花が綻ぶような笑みを浮かべていた。
「わ、私は何も……。高──いやもう一人の男性が頑張っただけで」
「ふふ、ご謙遜を。こないなところで立ち話もあれや。今……時間、ありますやろか。うちの店に寄ってって下さい」
そのように言われれば、桜花は戸惑いながらも小さく頷く。丁度沖田から茶屋へ入っているようにと言われたばかりのため、丁度良かった。 暖簾を潜り、長椅子に腰掛ける。すると目の前には団子と湯気の立つ茶が差し出された。
「どうぞ、召し上がっとくれやす」
「あの、このお金で足りますか」
桜花は慌てて握り締めていた金を目の前に差し出す。それを見た娘は目を丸くした。
「足ります……けど、お足は要りまへん。これはうちの奢りどす。御礼さしてください」
「そんな訳には……」
普通侍ならば堂々としており、何なら町民を見下す者が多いというのに、まるでそのような気配すら見せない桜花が不思議でならないとばかりに娘は瞬きをする。
くすりと笑うと、袖で口元を隠した。
「ほんなら、次またお客はんとして来てください。その方が嬉しおす」
娘も娘で譲らない姿勢のため、最終的には桜花が折れることになる。
「……分かりました。ありがとう、頂きます」
そう言うと、目の前の団子を一串取ると口へ含んだ。やはり美味しいと相好が崩れる。
「前もそうやったけど、美味しそうに食べはりますなぁ。甘いものはお好きどす?」
そのように指摘されると、たちまち桜花は顔を赤らめ、はにかみながら頷いた。
その様子に娘は胸を高鳴らせる。目の前の若侍は女形の役者のように愛らしい顔立ちをしているが、刀を持った浪士を前にすればたちまち捩じ伏せていた。かと言って恐ろしい訳でもなく、甘味を食べて喜んでいる。その差異が何とも言えない魅力だと思った。
「……すんまへん、ようけ話しかけてしもて不躾どした。やかましかったどすな」
娘は申し訳なさそうに眉を下げると、奥へ引っ込もうとする。
それを見た桜花はその背へ口を開いた。どうも年が近いとは何を話せば良いのか分からない。故にぶっきらぼうになってしまったが、気を遣わせただろうかと罪悪感が襲ってきたのだ。
「あ、あの!居て頂いて大丈夫……です。すみません、あまり話すのが得意ではなくて」
そのように言えば、娘は嬉しそうに目を細めながら戻ってくる。
その時、比較的近くから笛の音が聞こえた。それに桜花はビクリと肩を跳ねさせる。
それを見た娘は、先日この若侍と居たもう一人の侍が、入京を禁じられている長州の訛りだったことを思い出した。
──もしかして、こん人も?
「あの、奥に隠れはります?何なら、裏の勝手口から外へ出ることも出来ますよって」
その問い掛けに、今度は桜花が目を丸くする。
「え?」
「捕物から逃げてはると違います?」
「えっと……、私が?」
「へえ」
思案の末に、娘が勘違いをしているということに気付いた。恐らく、訛りの強い高杉と共に居たためにそう思ったのだろうと。