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らしくない夫の態度に少し引っ掛かりを覚えたが、濃姫はそれに躊躇うことなく頷いた。
「ええ。構いませぬ」
「しかし、そちにとっては大事なる守り刀であろう? 作り直すとまで言うたのに…何故じゃ」
眉根を寄せる信長に、姫は笑んで応えた。
「至極簡単なことにございます。確かにその刀は、私にとって何にも代え難い大切な物でございました。
なれど、それはもはや昔の話。今の私にはもう、刀などよりもずっとずっと代え難いと思える物が出来ました故」
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「まぁ──鈍感なお殿様でございますこと」
濃姫は童女のような可憐な笑い声を響かせると
「何をお考えになっているのかよう分からない、尾張の大うつけ殿にございます」
「何と…、この儂のことか!?」
「少なくとも尾張に二人も大うつけはおりませぬ故な」
姫は穏やかに微笑んだ。
「父上様には織田家入輿にあたり、嫁入り道具を始め多くの書や調度品を賜りました故、短刀の一振り…どうという事はございませぬ。
あなた様の妻、織田弾正忠家の奥を取り仕切る女主となった以上は、いつまでも美濃じゃ父上じゃと言うている訳には参りませんから」
毅然として言うものの、多少は無理もしているのだろう。
明るい笑顔の下からは、憂いを帯びた表情がうっすらと滲み出ていた。
ややあって、濃姫は半ば気持ちを切り替えるように一呼吸すると
「殿──。私を守って下さいましね」
真っ直ぐな瞳で信長を見た。
「私ばかりが大切な物を差し上げたのでは割に合いませぬ。刀を失のうた分、殿にはしかと私の身を守っていただかねば」
「この儂に代償を支払えと申すか」
「戦乱の世にございますれば、物でも人でも、ただで得られるものなどございませぬ」
「蝮の娘が、生意気なことを言いおって」
皮肉めいた言葉とは裏腹に、信長の顔は満足そうな笑みに溢れていた。
やおら彼は濃姫の手を取り、グイと自分の方に引き寄せる。
「お濃。やはりそなたは、儂が思うた通り──」
「え?」
「…いや、何でもない」
信長は姫の頭の上で小さくかぶりを振ると、彼女を抱いたまま、柔らかな布団の上へと沈んでいった。
夫の逞しい腕に包まれた濃姫は、一人の殿御に愛される女の喜びを、身をもって感じているのだった。
一夜明け、奥御殿の御座所に戻って来た濃姫は、軽い湯あみを済ませた後、
部屋の鏡台の前に端座し、三保野の手によって化粧を施されていた。
襖の開け放たれた部屋の入口から朝の強い陽が射し込み、白粉の塗られた姫の顔を明るく照らしている。
が、濃姫が浮かべている表情は、そんな明るい陽射しとは全く相反していた。
目は虚ろで、覇気がなく、時折困ったように表情を歪めては、重々しく溜め息を吐いている。
けれどそれは落胆、悄然といった感じではなく、怪訝な思いに心が巣食われているような、実に悩ましげなものだった。
「先程から浮かない様子にございますが、いったいどうなされたのです?」
三保野は気になって、思わず化粧道具を下に置いた。
「…え」
「“え”ではございませぬ。昨夜の殿との御寝(ぎょしん)は滞りなくお済みになられたというのに、
いったいどうなされたのです?
何か悩み事があるようでしたら、遠慮のう申して下さいませ」
すると濃姫は、一瞥するように三保野の顔を軽く見やると
「いや、何…。それほど大した事ではないのじゃが、どうしても解せぬでのう」
「何が解せないのです?」