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沖田がいかにも不服そうに振り向くと、先ほどお鈴がいた場所に土方が膝を立てて立っていた。
美海は土方に目を合わせない。が土方は気にも留めていないようだ。
「なぁにやってんだ」
土方はため息まじりに呟いた。
きてみればなぜか沖田は皿を洗っている。
土方はお鈴の新ルールの朝課題を知らない。
「土方さんこそなぜここに?」
「迎えに来た」
その言葉に美海はピクリと反応する。
相変わらず目は合わせない。
彼女は彼女なりに怒っているのだ。
「迎えに?」
「あぁ。今後のことが決まった。移動前にお光さんやらおツネさんやら彦五郎さんやらいろんな人に挨拶に回る」
沖田は目を輝かせた。
「急だが今からもう出発する。あっちに泊まる予定だ」
土方は淡々と話を進めた。香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
美海なんて空気のような扱いだ。
ズキン。
土方は美海に見向きもしない。
流石の美海も応えたし、虚無感が漂っていた。
連れて行かない予定なのだろう。
「早く準備しろ」
土方はそう言うと俯く美海の横をスッと通り抜けた。
ガシッ
「待てよ」
「あん?」
美海は土方の裾を掴むと睨み付けた。
土方も眉間に皺を寄せて美海を見ている。
「私は連れて行かないつもりなのかもしれないけどなぁ、私は絶対行くからな!」
美海は宣戦布告でもしたかのように指を差していた。
土方は鼻で笑うと、
「勝手にしろ」
と言って出ていった。
あの時と比べ、案外すんなりといって美海自身も驚きを隠せない。
「良かったですね」
沖田はクスクスと笑う。
美海のあの態度がどうも可笑しかったらしい。
「私、着いていっていいんですか…?」
「みたいですよ」
美海は呆然としていた。
「でも何で急に?」
「あの人も考え直したんでしょ」
再び沖田は笑った。
「早くしねぇと本気で置いてくぞ!!」
そんな間にも鬼の怒鳴りが飛んできた。
「今までありがとうございました!」
結局本当に美海も着いていくことになり、玄関先には三人の影がある。
「あらら。折角よく働く召し使いができたのに」
さも残念そうにお鈴は落胆の声を挙げる。
「それはどうも」
沖田はにっこりと笑いながらも額に青筋を浮かべた。
休息を取りに来たはずが、沖田に関してはかなり働いた。
健康面では良かったかもしれない。
「冗談よ」
お鈴はケラケラと笑った。
相変わらず快活な人だ。
憎めない。
「皆、気を付けてね。また戻ってくるのよ」
そんな彼女がふと真顔でそんなことを言ってきたものだから、美海も沖田も何度も頷いた。
「じゃあ、ありがとう。行ってくる」
土方は手を挙げると歩き出した。
また、次へ。
沖田と美海は頭を下げるとその後に続いた。
「負けるな…新撰組…!」
お鈴は祈るように呟くと彼らの後ろ姿を見送った。
「で、土方さん。もう行くってことはそれなりに集まったんですか?」
沖田が後ろから問いかける。
「あぁ。暴れたくてたまらんような粋の良い奴がいっぱいいるぜ」
それはつまり喧嘩集団なのだろうか。
すこぶる心配だ。
顔は見えないがきっと今、土方はニヤリと笑っているのだろう。
「あ、あと、幕府から新しい名を受けた。『甲陽鎮撫隊』らしい」
「なんとも反応しずらい名前ですね」
沖田の言葉に一同頷いた。
武田信玄の地、甲州。
気性が荒い人が多いと聞いた。
あそこが、戦場になるのか。
「甲州…かぁ…」
沖田が呟いたと同時に前の方に沢山の人がいるのが見えた。手を振っている。
どうやら、近藤達と合流するらしい。
「……美海」
今まで黙っていた美海に土方が声を掛けた。
一方薩摩藩邸にいた大男は。
「お前…坂本龍馬か?」
「違うきに。わしは才谷梅太郎ぜよ」
「土佐弁!?坂本龍馬が出現した!捕らえろー――!」
「やけぇ、違う言うとるやろ。おんしらのようなしつこい男は嫌われるぜよ!?」
ドドドドド!
「「「待てぇぇ!」」」
「見廻り組は人が多すぎじゃけぇ!西郷殿すまんきにー――!」
実はこの走って逃げている大男。坂本龍馬である。
身長は182ぐらいある。
お尋ね者だ。
坂本は走りながらチラリと曲がり道を見る。
「「「まー―――てぇぇ!」」」
ドドドドド!香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
「ええぇ!?そっちからも来よった!?ピンチじゃぁぁあ!」
曲がって逃げようとおもっちょったのにぃー!
曲がり道からは砂煙がたっている。
見えないが見廻り組が来ているのは確かだ。
「待てと言われて待つ馬鹿がいるか!」
「その声は…桂か!?」
「坂本!?」
二人はちょうど鉢合わせした。どうやら桂も追われていたようだ。
「久しぶりじゃのぉぉ!」
「ああ。まさかこんなところで会うとは」
「二人いっぺんに捕まえろぉぉぉ!」
坂本を追っていた見廻り組と桂を追っていた見廻り組が合流し、後ろを振り返えると沢山いる。
「再会を喜んでいる暇もくれないようじゃ。真っ直ぐ突っ走るぜよ!」
その疾風に人々は思わずサッと道を開ける。
「せんきゅーせんきゅー!」
坂本は手を上げている。
ザザッ…
「そこまでだ!」
ずっと走り続けていたのだが、道の前からも沢山の見廻り組が来た。
仲間を呼んだのだろう。
「今日は運がいい。いつもなら見つけられない桂までいるんだからなぁ。お前らは完全に包囲されている!無駄な抵抗は止めろ!」
「はははは!さぁ。逃げ道はないぞ。お縄に掛かってもらおうか」
ジリジリと見廻り組は桂と坂本に迫る。
「おーのぉ…」
坂本は苦笑いして頭を抱えた。
ガラッ
「ご馳走様でしたぁ~」
結局美海はペロリと完食し、用もないため再び京の街を歩き出した。
しっかし…私の胃と財布が本格的にヤバい気がする。
「はぁぁぁ…」
行く宛もないがただブラブラと歩く。
「かかれぇ!」
お?なんか大声が聞こえる?
あの角からだ。
気になる。
そういやあそこ曲がったことないなぁ。
美海はふと近くの角を曲がった。
「!?」
美海が角を曲がると沢山の見廻り組がいた。誰かを囲っているようだが全く見えない。
「どうしたんですか?」
近くにいた見廻り組に聞く。
「あ!立花さんじゃないですかぁ!実はここにか… パァン!
拳銃の音!?
「これ以上よると皆バーンぜよ?」ぜよ?
何処の方言だろう…。
美海がふと考えるとまた声が聞こえる。
「おんしらそこを退くぜよ。桂!」
「おぅ」
カチャ
「皆コイツでバーンとすれば早いんじゃけど」
皆ゴクリと唾を飲む。
「弾は高いきに。やけぇ」
銃をしまった。そして刀を抜く。
「斬らせてもらうぜよ」
桂と坂本は背を合わせて刀を向けている。
「怯むな!かかれぇ!」
「「「おおおぉう!」」」
一斉に見廻り組は桂、坂本に飛びかかる。
美海はよくわからないまま突っ立っていた。
カンッ
キィン!
休む間も無く刀の交わる音が聞こえる。
こりゃ中の人終わりだな。こんなに沢山の見廻り組に囲まれてるもん。
本当に人が多すぎてどういう状況かもわからない。
キィンッ!
人が倒れる音と刀が交わる音が鳴りやまない。
バサ…
ドドドドド!
「え?」
「逃がすなぁぁああ!」
砂煙の中から二人、人が走ってくる。
後ろには再び追いかける見廻り組がいる。
「う…そ?」
逃げ出した?あの中から?
桂と坂本はなんとか見廻り隊を振り切り、押し出てきたのだ。
ドドドドド!
その男達は美海のすぐ横を通り過ぎた。「桂ぁ!掴まれぇ!」
ビュン
ガッ
坂本は先に爪のついた縄を屋根に引っかけると桂を上に引っ張った。
あれ桂じゃん!なんで!?
もう一人も………どっかで見たことある…。
「はははは!ぐっば―い!」
「さらば!」
気付けば二人は屋根の上にいる。
まさか…あの顔って…
「そなたが産まれた時は、あれこと気をんだものじゃが、この父の予想に反して、
そなたは優しく、聡明で、そして強い娘に育ってくれた。もしも、そなたに…」
ふいに信長は言い淀んだ。
「どうぞ、って下さい」
胡蝶は何を言われても構わないという気合いで、先をした。
信長は穏やかな表情になって、再び口を開く。
「…もしもそなたに、身体の障りがなく、他の姫たち同様に、この信長の娘であると公言出来る立場にあれば、
織田家のとして今よりもずっと素晴らしい人生が待っていたであろうに──実に惜しきことよ」
胡蝶は、頬に当てられた父の手の上に、自分の手を重ねると 香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
「私は、今の暮らしに甘んじておりまする。だと思える程に」
信長に暖かい眼差しを向けた。
「何せ私は、父上様や母上様、私を支えてくれるから、これ以上ない程の愛情を受けております故。
常々申しているのですよ。こんなに恵まれているのに、一々文句など言うていたらが当たると」
「胡蝶…」
「信忠の兄上も何かとお気遣いをお示し下さいますし、蘭丸様も側に付いてくれております故、私にとっては、
今が最も幸せな時なのでございます。ですからどうか、左様にお悲しきお顔をなさらないで下さいませ」
な胡蝶の微笑みを見て、信長はが下りたような、
どこか爽快さの漂う面持ちで、改めて愛娘を見つめ返した。
「左様か…。 そなたが幸せであるのならば、それでい」
信長は優しげに双眼を細めると
「──さて、中国から戻って参ったら、そちと蘭丸の祝言じゃ。これから忙しゅうなるぞ」
「はい。覚悟致しておりまする」
「今更であるが、相手はまことに蘭丸で良いのか?」
「勿論にございます」
「儂がその気になれば、もっと条件の良い相手を見付けてやることも出来るのだぞ」
本気とも冗談ともつかぬ口調で信長が言うと、胡蝶は笑んでかぶりを振り
「いいえ、蘭丸様が良いのです」
と迷いなく告げた。
「蘭丸様は姿形ではなく、常に私の内面に目を向けて下さいます。その実直さ、誠実さが、憂いた私の心を何度救って下されたことか──。
何より私自身が、あのお方にかれ、妻になりたいと思うているのです。蘭丸様以外のお方など考えられませぬ」
胡蝶は満面に笑みをえながら、静かに首を振った。
すると信長は、やおら浅いめ息を漏らし、面白くなさそうに下唇を噛んだ。
「蘭丸めが…、織田家の嫡女をここまで骨抜きにするとは、実にけしからん奴よ。
婚儀が終わったら、あやつを一生 ただ働きにしてくれるわ」
「またそのような意地悪をって」
「そなたという最も価値ある宝をくれてやるのじゃ。儂からこれ以上 むのは贅沢というものよ」
「まぁ。ふふふ…、でも、確かにそうですね」
「そうであろう?」
信長と胡蝶は目を見合せ、冗談まじりの心地の良い笑い声を響かせた。
まさかこれが、最後の父と娘の会話になろうなどとは、いに知る由もなく──。
信長が胡蝶の部屋を去ってから、ほど経った頃
「申し上げます──。御台様、大方様、共にお越しにございます」
今度は、濃姫と報春院がやって来たとのせが、お菜津によってもたらされた。
部屋の前の入側で、端然と双の手をつかえているお菜津に、胡蝶はそうな眼差しを向ける。
「…母上様とお様がご一緒に?」
「左様にございます」
母と祖母が共にやって来るとは実に珍しい。
しかもこのような忙しい朝に。
「わざわざお二人揃ってとは──何用であろうか?」
胡蝶の問いに、お菜津は満面に動揺を走らせると
信光は胡座の足を素早く組み替え、ぐいっと身を前に突き出すと
「分かっているとは思うが、儂が迷わずここへやって参ったのは、清洲の誘いに乗る意思のなき事を、行動をもってそなたに示す為じゃ。
坂井の甘言などには微塵も心は動いておらぬ。下四郡を手に入れたいのは山々じゃが、逆臣・傀儡の信友などと共に守護代を名乗る事に何の意味があろうか」
守護代は一人で十分だと、信光は吐息混じりに呟いた。
「儂はな信長殿、これまで同様そなたと手を結び、共に清洲の連中を攻め滅ぼしたいと思うておる」
「有り難きお言葉にございます」
「故に、ここは一つ大芝居を打ち、守護代、小守護代ら諸とも騙し討ちに致そうかと考えておるのだ」
「騙し討ち…にございますか」香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
「そうじゃ。頼みに応じる振りをし、隙を見てまず、大膳を討つ。巨悪の根源たる小守護代を始末すれば、信友とて成す術を失おう」
もはや側に濃姫がいる事も忘れ、信光は甥の興味を引こうとするような妙に現実的な言い方で、自身の考えを述べた。
やおら信長は思案顔になると、ふむと腕を組んで
「叔父上のお考えは粗方分かり申した。 …なれど左様な大掛かりな真似を、無益でして下さる訳ではございますまい?」
相手の心の内を探るように訊ねた。
「それは無論。事が万事滞りなく運んだ暁には、戦利品の山分けをお願い致したい」
「山分け─」
「於多井川(おたいがわ)を境として、尾張下四郡のうち東半分を貰い受けたい」
「つまりは、儂と叔父上で下四郡を二郡ずつに分けて領有致したいと?」
「左様。それと、そなたが清洲の城に移った後は、この那古屋の城を我が居城と致したい」
「ほぉ、この城をですか」
信長の目が徐(おもむろ)に室内を見渡した。
「この二つを呑んでいただけるのならば、見事、清洲の城を騙し取ってご覧に入れましょうぞ」
信光は自信たっぷりに言うと、やや白髪の目立ち始めた頭を慇懃に下げた。
「──下四郡の内の半分と、そしてこの城…。清洲の城も権威もそっくり手に入る事を考えれば、妥当な条件なのであろうのう」
暫しの休息と称し、信光を一旦客間へと去らせた信長は、座敷の前庭を眺めながら抑揚なく呟いた。
濃姫は変わらず下段の最前に控えたまま、座敷に背中を向け続ける夫に無感情な視線を送っている。
「濃、そなたはどう思った? 先程の叔父上のお考えを聞いて」
「畏れながら、私が意見を申し上げても宜しいのでしょうか?」
「その為にそなたを同席させたのじゃ。遠慮はいらぬ、思うところを申せ」
「…それでしたら」
濃姫は黒漆塗りの床板から軽く腰を浮かせるようにして、くいっと信長の方に身体を向け直すと
「私が殿のお立場でしたら、信光様のお考えに喜んで賛同致しまする」
如何にもな聡明さを、その細面に湛えながら言った。
「その心を伺おうか」
「信光様は殿の数少ない支持者のお一人、これまでの経緯を考えても、信じるに値するお方である事は間違いございませぬ」
「ん─」
らしくない夫の態度に少し引っ掛かりを覚えたが、濃姫はそれに躊躇うことなく頷いた。
「ええ。構いませぬ」
「しかし、そちにとっては大事なる守り刀であろう? 作り直すとまで言うたのに…何故じゃ」
眉根を寄せる信長に、姫は笑んで応えた。
「至極簡単なことにございます。確かにその刀は、私にとって何にも代え難い大切な物でございました。
なれど、それはもはや昔の話。今の私にはもう、刀などよりもずっとずっと代え難いと思える物が出来ました故」
「それは何じゃ?」香港顯赫醫學植髮中心 NU/HART - 保證有效、安全、永久、自然、美觀
「まぁ──鈍感なお殿様でございますこと」
濃姫は童女のような可憐な笑い声を響かせると
「何をお考えになっているのかよう分からない、尾張の大うつけ殿にございます」
「何と…、この儂のことか!?」
「少なくとも尾張に二人も大うつけはおりませぬ故な」
姫は穏やかに微笑んだ。
「父上様には織田家入輿にあたり、嫁入り道具を始め多くの書や調度品を賜りました故、短刀の一振り…どうという事はございませぬ。
あなた様の妻、織田弾正忠家の奥を取り仕切る女主となった以上は、いつまでも美濃じゃ父上じゃと言うている訳には参りませんから」
毅然として言うものの、多少は無理もしているのだろう。
明るい笑顔の下からは、憂いを帯びた表情がうっすらと滲み出ていた。
ややあって、濃姫は半ば気持ちを切り替えるように一呼吸すると
「殿──。私を守って下さいましね」
真っ直ぐな瞳で信長を見た。
「私ばかりが大切な物を差し上げたのでは割に合いませぬ。刀を失のうた分、殿にはしかと私の身を守っていただかねば」
「この儂に代償を支払えと申すか」
「戦乱の世にございますれば、物でも人でも、ただで得られるものなどございませぬ」
「蝮の娘が、生意気なことを言いおって」
皮肉めいた言葉とは裏腹に、信長の顔は満足そうな笑みに溢れていた。
やおら彼は濃姫の手を取り、グイと自分の方に引き寄せる。
「お濃。やはりそなたは、儂が思うた通り──」
「え?」
「…いや、何でもない」
信長は姫の頭の上で小さくかぶりを振ると、彼女を抱いたまま、柔らかな布団の上へと沈んでいった。
夫の逞しい腕に包まれた濃姫は、一人の殿御に愛される女の喜びを、身をもって感じているのだった。
一夜明け、奥御殿の御座所に戻って来た濃姫は、軽い湯あみを済ませた後、
部屋の鏡台の前に端座し、三保野の手によって化粧を施されていた。
襖の開け放たれた部屋の入口から朝の強い陽が射し込み、白粉の塗られた姫の顔を明るく照らしている。
が、濃姫が浮かべている表情は、そんな明るい陽射しとは全く相反していた。
目は虚ろで、覇気がなく、時折困ったように表情を歪めては、重々しく溜め息を吐いている。
けれどそれは落胆、悄然といった感じではなく、怪訝な思いに心が巣食われているような、実に悩ましげなものだった。
「先程から浮かない様子にございますが、いったいどうなされたのです?」
三保野は気になって、思わず化粧道具を下に置いた。
「…え」
「“え”ではございませぬ。昨夜の殿との御寝(ぎょしん)は滞りなくお済みになられたというのに、
いったいどうなされたのです?
何か悩み事があるようでしたら、遠慮のう申して下さいませ」
すると濃姫は、一瞥するように三保野の顔を軽く見やると
「いや、何…。それほど大した事ではないのじゃが、どうしても解せぬでのう」
「何が解せないのです?」